心臓血管外科医渡邊剛の40年の軌跡 ~My Story~
成功率100%へのストーリー
日本や欧米の心臓外科の手術成功率は97%です。一見すると高い成功率に思えますが、皆さんはどう思われるでしょうか。
97%の成功率は逆に考えると、100人のうち3人程度が亡くなるということになります。これは決して安全な手術とは言えません。
私は長年、なぜ死亡率が下がらないのか考え研究してきました。その大きな原因のひとつが、人工心肺に起因するものでした。冠動脈バイパス手術では、人工心肺を使わないオフポンプCABGにすることで容易に安全性を上げます。
一方、弁膜症など人工心肺の使用が必須の手術では、人工心肺を使用したからリスクが上がるだけではなく、人工心肺時間さらに心臓を止めている時間も死亡率に関係があることもわかりました。この論文は日本全国の統計を基にして書いたもので、米国胸部外科雑誌に掲載されています。
そのため私は人工心肺を使う心臓内手術(例えば弁形成術や弁置換術など)では、人工心肺の時間を極力短くする工夫を重ねてきました。心臓を止めている時間(心停止時間)を短くした結果、死亡率や合併症である脳梗塞や肺炎等の発症率は低下しました。
そのようにして我々は過去30年間にわたり、死亡率や合併症を限りなくゼロに近づけるように、数多く検討を重ね実行してきました。また大動脈瘤の手術では従来のように大幅に体温を20℃~25℃に下げるのではなく、32℃程度の軽度低体温で手術を行うことを提唱し、実践してさらに安全性が高まりました。
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