心臓血管外科医渡邊剛の40年の軌跡 ~My Story~
薬事承認、保険診療へのストーリー
日本でダビンチを使った心臓手術が保険適用として正式に認められたのは2018年で、私たちがダビンチを導入してから実に13年が経過していました。
それには色々な邪魔が入ったからです。米国や欧州では既にダビンチによる弁膜症手術や冠動脈バイパス手術は応用されていました。日本は、日本ジョンソン&ジョンソン社がダビンチの薬事承認を行っていましたが、当時の松本晃社長が厚労省に提出する機器承認の書類に「冠動脈バイパス手術についてはアメリカでは禁忌である」という誤った一文を載せたために、その後厚労省には長い間「ダビンチ心臓手術=危険」という印象を持たれてしまったのです。当時のJJ社は冠動脈インターベンションで使用する薬剤溶出性ステント“サイファー”を発売しており、それが日本のシェア100%を占めていたため、ダビンチを使用して完全内視鏡下の冠動脈バイパス手術ができるようになると自社に不利益になるという裏事情があったのでした。その結果、心臓へのダビンチの薬事承認は10年以上もの間凍結されました。悪意のある邪魔者はいるものです。
それでも我々は一人ひとりの患者さんに丁寧にダビンチ手術を行い、実績を積み重ねてきました。その積み重ねが評価され、ようやく厚労省に薬事承認され、2018年に保険診療として認められることになったのです。その後のダビンチ心臓手術の発展については、皆さんもご存じの通りです。
ストーリー