心臓血管外科医渡邊剛の40年の軌跡 ~My Story~
外科手術用ロボット“ダビンチ”のストーリー
「ダビンチ」という機械が1994年の湾岸戦争によって生まれたことは1998年頃から知っていました。その時私は外科のゲームチェンジャーだと直感しました。このロボットは3次元画像を映し出すカメラと、画像を立体的に見られる没入型の画像システム、そして精密な操作が可能な鉗子から構成されています。その性能の優秀さは、直径1.5mmの細い血管同士を内視鏡下に正確につなぐことができるほど精緻な手術が可能である点にあります。
この手術が始まった当初は前立腺の手術に使われていましたが、心臓に利用されたのは2000年でした。弁膜症、そして冠動脈バイパス術にダビンチが用いられ、その大きな可能性が示されました。
当時の日本にはまだ導入されておらず、2005年になってようやく4台が設置されました。そのうち2台は、私が勤務していた金沢大学と、兼任教授をしていた東京医大に、残りは九州大学と国立循環器病センターに1台ずつ導入されました。
私たちは研究用機器として文部科学省に申請して手に入れることができましたが、当時この機械を心臓手術に使っている施設は皆無で、学会では「宇宙か戦争でしか使えない」とまで言われていました。
我々は導入後にアメリカへ研修に行き、カダバー(献体)トレーニングなどを通して技術を習得しました。そして同年臨床に臨み、手術を完遂にさせることができました。
ストーリー