僧帽弁形成術の概要

  • 手術後の退院までの日数:5~10日間
  • 保険適応

僧帽弁形成術は、僧帽弁置換術に比べ、感染症や血栓症のリスクが低い一方、より高度な技術が必要とされます。

日本胸部外科学会が調査した僧帽弁手術における形成術適用の割合、平均約60%(日本胸部外科学会調査)に対し、
チーム・ワタナベではほとんどの患者さんに対して僧帽弁形成術を行い、良好な結果を得ています。

私たちは、手術支援ロボット「ダビンチ」による内視鏡手術や、小切開法(ポートアクセス法)を手がけ、体や心臓への負担が小さい手術を推進しています。特にダビンチ手術では正確な弁の形成ができ、術後の弁の機能が非常に良好に保たれます。

2018年4月よりダビンチを用いた僧帽弁形成術が保険適用!

2018年4月よりダビンチ(ロボット手術)を用いた弁形成術に健康保険が使えるようになりました。ニューハート・ワタナベ国際病院では僧帽弁形成術の第一選択としてダビンチ手術を行なっています。

ダビンチ(手術支援ロボット)手術の詳しい説明ページはこちら

手術支援ロボット「ダビンチ」を用いた内視鏡手術

手術支援ロボット「ダビンチ」での内視鏡を用いて傷を小さくする手術をしています。この手術法を用いると、手術傷が小さいので術後の回復が早く、ほぼ5日で自宅に帰ることができ、また、とても正確な弁の形成ができますので、術後の弁の機能がとてもよく保たれています。

特に、ロボット内視鏡を使うととても正確な弁の形成ができますので、術後の弁の機能がとてもよく保たれています。

ダビンチとは手術用のロボットの名前です。ダビンチを用いて行う僧帽弁形成術は、正中切開や小切開(MICS)に比べて以下のような大きな利点があります。

  • 傷が小さい
  • 出血が少ない
  • 傷の痛みが少ない(神経も傷つけません)
  • ミリ単位の正確さで手術ができます
  • ダビンチでのロボット手術

こちらのページから手術後の患者さんを撮影した映像で、手術後の回復ぶりと弁が完全に治っていることをご覧下さい。他にも、さらに詳しくお知りになりたい方もこちらをご覧ください。

ダビンチ(手術支援ロボット)手術の詳しい説明ページはこちら

小切開手術を用いた僧帽弁形成術

心機能が低下していたり、動脈硬化が進んでいる患者さん、肺の癒着があり内視鏡手術のできない患者さんの場合には小切開心臓手術を行います。

ダビンチでの内視鏡手術の技術が小切開手術に応用されているチーム・ワタナベ(ニューハート・ワタナベ国際病院)では、他の病院とは次元の違う心臓手術を実現しています。

小切開手術のメリットは以下があります。

  • 出血量が少ない、痛みが少ない、傷が小さい
  • 手術が早く終わる
  • 手術後早くもとの生活に戻れる
  • 傷が胸の真ん中に残らない

小切開手術(MICS)の詳しい説明ページはこちら


僧帽弁形成術の詳細説明

僧帽弁がなんらかの原因で損なわれると、心臓のポンプ機能がきちんと果たせなくなり、心不全を引き起こす危険性があります。その状態を僧帽弁閉鎖不全といいます。その損なわれた僧帽弁を修復する手術法のひとつが、僧帽弁形成術です。

ここでは、僧帽弁形成術とはどんな手術なのかをご説明します。

僧帽弁形成術とは?

僧帽弁形成術とは、損なわれた僧帽弁を温存しつつ修復する手術法です。
僧帽弁とは、心臓にある4つの弁のうち、左心房と左心室の間にある弁で、左心房から左心室に酸素の豊富な動脈血を送り込む際の、ゲートの役割を果たしています(図1)

心臓のしくみ
図1

僧帽弁は、弁尖(弁の扉を成している部分で、前尖と後尖の2枚がある)、弁輪(弁の外周)、腱索(弁尖と乳頭筋を繋ぐひも状のもの)、乳頭筋(左心室から伸びている筋肉)で構成されています(図2、3)

心臓の弁
図2

像法弁の構造
図3

粘液様変性、リウマチ熱の後遺症、感染性心内膜炎、バーロー症候群(Barlow’s syndrome)やマルファン(Marfan)症候群などの先天的な疾患、心筋症、虚血性心疾患などが原因となって、弁尖や腱索などが切れたり、伸びたり、穴を開けたりすると、僧帽弁が正常に働かなくなります。弁輪の径が広がると、弁がきちんと閉じなくなります。

損なわれた僧帽弁は内科的な治療では治せず、手術が必要になります。僧帽弁形成術では、切れたり伸びたり穴を開けたりした箇所を、縫ったり繋いだりして修復します。

僧帽弁形成術と僧帽弁置換術の違い

僧帽弁を修復する手術には、自分の弁を温存する僧帽弁形成術のほか、弁を人工物に取り換える僧帽弁置換術があります。

僧帽弁置換術では、損なわれた弁を人工弁に置き換えます。人工弁には、特殊なカーボン材で作られた機械弁と、牛の心膜や豚の大動脈弁を加工した生体弁があります(図4)

機械弁と生体弁
図4

機械弁には、半永久的な寿命を持つという長所がありますが、一方で、弁の周辺で血液が凝固しやすいという短所があります。したがって、機械弁に置き換えたあとは、血液を凝固させないよう、ワーファリンなどの抗凝固剤を一生飲み続けなければなりません。

生体弁に置き換えた場合は、そうした血液凝固の心配はありませんが(ただし、手術後3~6か月くらいは抗凝固剤を服用しなければなりません)、短所は機械弁ほど長持ちしないことです。寿命は一般に15年から20年程度、若い人だと10年以下で劣化してしまいます。生体弁が劣化すると、再手術ということになります。

僧帽弁形成術の優位性

僧帽弁形成術と僧帽弁置換術を比べた場合、僧帽弁形成術のほうが、いろいろな点で優れています。

僧帽弁形成術は自己の弁を温存する手術なので、弁の周辺で血液が凝固する心配がなく、抗凝固剤を服用する必要がありません。また、手術死亡率、左心室機能の回復具合、術後合併症(脳梗塞や感染症、血栓症など)や再手術の回避、といった面でも、僧帽弁置換術より優れています。

そのため、近年では多くの病院で、僧帽弁形成術が可能かどうかをまず検討し、僧帽弁形成術では修復が難しいと思われる場合に、僧帽弁置換術が検討されます。日本胸部外科学会の2013年の調査によれば、僧帽弁手術において形成術の占める割合は、平均約60%となっています。

ニューハート・ワタナベ国際病院においては、僧帽弁のみの手術では、術前の検査で弁形成が可能と診断した場合は、ほぼ100%弁形成術を行なっています(リウマチ性のものを除く)。これまで手術中に方針を変え、弁置換にしたことはありません。

ただし、僧帽弁置換術より僧帽弁形成術のほうが技術的に難しく、執刀医に大きな技術力の差があります。弁の修復がうまくいかず、再手術となるケースは、決して珍しいものではありません。したがって、手術を受ける場合は、症例数が多く、成績の良い施設を選ばれることをお勧めします。

僧帽弁形成術の行なわれる適応疾患

僧帽弁形成術が行なわれる適応疾患は、僧帽弁閉鎖不全症です。
僧帽弁閉鎖不全症とは、僧帽弁が、本来閉じなければならないときに、きちんと閉じなくなってしまう病気です。

僧帽弁は、心臓の拡張期に開いて、左心房から左心室に血液を送り込み、収縮期にはぴたりと閉じて、左心室から大動脈に血液が送り出されるのを助けています(図5)。ところが、僧帽弁が損なわれ、収縮期にぴたりと閉じなくなると、大動脈に向かうはずの血液の一部が、僧帽弁のすき間から左心房のほうへ逆流してしまいます(図6)。これが僧帽弁閉鎖不全症です。

正常な血液の流れ
図5

僧帽弁閉鎖不全症での血液の流れ
図6

血液が左心房に逆流すると、左心房の圧が高まり、左心房が拡大します。また、左心室から大動脈に送り出される血液の量が減り、それをカバーしようと、左心室も拡大します。その結果、やがて心臓のポンプ機能がちゃんと働かなくなり、左心不全(左心房や左心室に起因する心臓の機能不全)を引き起こします。

僧帽弁閉鎖不全症の症状

僧帽弁閉鎖不全症では、多くの場合、心臓の代償機構(ポンプ機能を維持しようとするさまざまな作用)が働くので、しばらくは無症状で経過しますが、進行すると、代償機構が破綻し、さまざまな症状が出てくるようになります。

初期は、階段や坂道の上り下りで息切れを起こし、やがて平地を歩いたり着替えをしたりするだけで息が切れるようになります。夜間に小水に起きたりもします。

病気が進むと、夜間発作性呼吸困難(寝ていて急に起こる呼吸困難)や起座呼吸(横になると苦しいので常に体を起こして呼吸する状態)を起こすようになります。激しい咳や胸痛が出ることもあります。

重症化すると現われるのが、心房細動という頻脈(不整脈の一種)です。心房が細かく震えるため、心房の中に血栓(血の塊)ができやすくなり、これが大動脈を経由して脳に飛び脳の血管を塞ぐ、心源性脳梗塞を起こす危険性が増します(図7)

心源性脳梗塞のイメージ
図10

どの程度進行していると手術なのか

軽度の僧帽弁閉鎖不全症の場合は、血管拡張薬や利尿薬で血圧を下げるなどの内科的治療を行ない、経過観察します。

病気が進行し、呼吸困難などの症状が出ていたり、心臓の負担が増していたり(左心室の収縮力低下、左心室の拡大など)、超音波(エコー)検査で50%以上の逆流が観察されたりする場合は、手術となります。薬による内科的治療は対症療法に過ぎず、弁自体は修復できないからです。

心房細動を合併している場合は、同時に心房細動を抑えるメイズ手術なども検討します。

僧帽弁形成術の保険適応

僧帽弁形成術を行なう際の技法のひとつに、ダビンチ手術(手術支援ロボット“ダビンチ(da Vinci Surgical System)”を使う完全内視鏡下手術)があります。今、最も体に優しい(体に傷を負わせない)手術法で、この手術法によれば、入院期間も短く、早期の社会復帰も可能です。

ダビンチ手術は、これまで健康保険の適応外でしたが、2018(平成30)年4月から健康保険が使えるようになりました。ニューハート・ワタナベ国際病院では、僧帽弁形成術の第一選択としてダビンチ手術を行なっています。

僧帽弁形成術の手術方法

僧帽弁形成術では、弁尖の逸脱(左心房側にはみ出している)部分を切除し、縫い合わせ(図8)、切れた腱索は糸で再建し(図9)、拡大した弁輪には糸をかけ、人工弁輪を縫い付けて縮めます(図10)

弁尖の修復
図8

人工腱索
図9

人工弁輪
図10

従来型の手術と低侵襲手術
僧帽弁形成術を行なうに当たっては、体へのメスの入れ方で、大きく2つの方法があります。従来型の胸に大きくメスを入れる方法と、なるべく体にメスを入れない低侵襲の(体を侵襲しない=傷をつけない)方法です。

①胸骨正中[きょうこつせいちゅう]切開手術

従来型の方法は、胸骨正中切開手術と言います。
胸骨とは胸の真ん中正面にある大きな骨です。胸骨からは、何本もの肋骨が横に張り出しています。この胸骨と肋骨とでできた頑丈な籠の中に、心臓や肺が収められています。

したがって、従来、心臓の手術をしようとすれば、胸骨を縦に大きく切り開き、開胸器で押し広げて心臓を露出させるしかありませんでした。このやり方が胸骨正中切開です(図11)

胸骨正中切開
図11

このやり方には、

  • 胸を大きく切り開くので、痛みその他、患者さんの体に大きな負担がかかる。
  • 胸骨が元どおりくっつくまでに時間がかかり、それだけ入院も長期にわたり、社会復帰も遅れる。
  • 手術が原因の感染症が起こりやすい。
  • 大量の出血をする。
  • 不整脈や心不全を起こしやすい。

といった欠点があります。

②低侵襲手術

胸骨正中切開手術の欠点をカバーするために開発されたのが低侵襲手術で、ダビンチ手術とMICS(ミックス:minimally invasive cardiac surgery)があります。

②-1:ダビンチ手術

ダビンチ手術は、手術支援ロボット(商品名ダビンチ)を用いた完全内視鏡下手術です。執刀医は、高度に進化したコンピュータ制御の内視鏡の支援を得て手術します。

ダビンチ手術では、胸に4つの小さな穴を開けるだけです(図12)。4つの穴からメスや鉗子[かんし]、カメラなどを装着したロボットの腕(アーム)を差し込みます。執刀医は、患者さんから3メートルほど離れた操作台から、送られてくる3次元のモニター画像を見ながら、ロボットの腕をミリ単位で操作します(図13)

ダビンチ手術の傷跡
図12

ダビンチによる手術
図13

患者さんの体の負担は大変軽く、手術中の出血も極めて少量です。傷の痛みも少なく、神経も傷つけず、傷もすぐふさがります。そのため、手術後3日の入院で帰宅することも可能です。

特に僧帽弁形成術では、ダビンチ手術が威力を発揮します。僧帽弁は、位置的に深く切り立った崖のようなところにあり、胸骨正中切開による正面からのアプローチでは、その閉鎖不全状態の観察が難しいのですが、ダビンチ手術の場合は右横からのアプローチになります。そのため、閉鎖不全状態の観察が容易なのです。正確に弁を形成することができ、術後の弁機能はとてもよく保たれます。

ただし、ダビンチ手術においては、医師に高度の技術力・経験が求められます。

②-2:MICS(ミックス)

ポートアクセス法ともいわれる小切開手術で、右側の胸の肋骨の下を6~8センチほど切り開きます(図14)

MICS
図14

ダビンチ手術同様、胸の右横から僧帽弁にアプローチするので、僧帽弁の閉鎖不全状態がよく観察でき、正確な弁形成が行なえます。

胸骨正中切開手術に比べると、出血や痛みが少なく、傷も小さく、術後の傷跡も目立ちません。術後の回復も早いので、入院期間も短縮します。

ニューハート・ワタナベ国際病院では、ダビンチ手術の内視鏡下手術の技術がMICSに応用されています。ダビンチ手術を選択しない場合の僧帽弁形成術は、ほぼこのMICSで行なわれています。

ただし、ダビンチ手術同様、医師に極めて高度な技術力・経験が求められるだけでなく、麻酔科医・臨床工学技士・看護師らとの緊密なチームワークが求められます。

僧帽弁形成術の手術時間

ニューハート・ワタナベ国際病院のダビンチ手術では、僧帽弁形成術の手術時間は約3時間です。

ニューハート・ワタナベ国際病院における術後の患者さんの入院日数は、ダビンチ手術の場合は7〜8日、MICSの場合は8~14日です。退院後、自宅で1~2週間療養すれば、社会復帰できます。

僧帽弁形成術の手術後の運動

ダビンチ手術やMICSで僧帽弁形成術を受けた場合、術後の運動制限はほぼありません。胸骨にメスを入れないからです。一方、胸骨正中切開手術では、切り開いた胸骨が再びくっつくまでの約2か月は運動ができません。

ただし、僧帽弁閉鎖不全症のほとんどは慢性に進行するので、術後、多くの患者さんは心機能が充分に回復していません。それで、術後しばらくは体に負担のかかる運動は控え、経過を見、医師と相談しつつ、徐々に体を慣らすようにしましょう。

僧帽弁形成術の手術成績と成功率

単独僧帽弁手術で比べた場合、日本における僧帽弁形成術の成功率は、僧帽弁置換術を上回っていて、僧帽弁形成術の病院死亡率は約1.1%(術後院内30日以内死亡は約0.5%)、僧帽弁置換術の病院死亡率は約5.9%(術後院内30日以内死亡は約3.5%)です。なお、僧帽弁置換術も併せた僧帽弁の再手術の病院死亡率は、約7.8%と高率です(日本胸部外科学会が全国集計した2014年の公式データによる)。

同データによれば、弁膜症手術全般(再手術を除く)での病院死亡率は約3.1%(術後院内30日以内死亡は約1.9%)となっていますが、ニューハート・ワタナベ国際病院での弁膜症手術の死亡率は、わずか0.3%です。

ニューハート・ワタナベ国際病院での開院からの手術実績
(2014年5月19日〜2018年12月31日)
  • 手術件数
    2610件
(心臓手術 合計1912件)

チーム・ワタナベ手術実績
2000年-2014年(開院前)

狭心症・心筋梗塞 2,484
心臓弁膜症 1,131
大動脈瘤 292

僧帽弁形成術へのご相談はこちらから。 渡邊医師が直接お答えさせていただきます。 心臓の手術でお悩みの患者さんのために私たちがいます。

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ニューハート・ワタナベ国際病院の紹介

心臓血管外科・循環器内科を中心とした高度専門治療を行う「ニューハート・ワタナベ国際病院」では、身体に優しい小切開手術やロボット支援手術などの最新かつ高品質な医療を提供しています。診察から手術を通して痛みや負担から患者さんを解放することを目標にし、日々工夫しています。
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