心房中隔欠損症とは?

心臓の中の壁に穴がある先天性心疾患心房中隔欠損症(しんぼうちゅうかくけっそんしょう)とは

心臓の右心房と左心房の間にある「心房中隔」と呼ばれる壁に、生まれつき穴(欠損孔)が開いている疾患を心房中隔欠損症といいます。先天性心疾患の約6~10%を占める病気で、男女比1:2で女性に多いと言われています。
胎児のときは誰にも欠損孔があるのですが、通常は新生児となるまでに自然とふさがります。

正常な血行動態では、肺で酸素を取り込んだ血液(動脈血)は左心房から左心室へ流れ込み、そこから全身へ送り出されます。心房中隔欠損症の場合は、肺から戻る血液の一部が欠損孔を通って左心房から右心房に流れ、再び肺循環に入る状態になってしまいます。右心房や右心室の負担が増え、特に肺に流れる血液の量が増加することで肺うっ血、肺高血圧を引き起こします。

心房中隔欠損症の主な症状

成人の場合

ほとんどの人は思春期ごろまで呼吸困難、動悸、息切れ、疲れやすさといった自覚症状はありませんが、30歳になるころまでに肺血管の血圧が高い状態となり、呼吸困難などの心不全症状、動悸、息切れ、不整脈などの症状が出ます。合併症として心房細動、心不全、肺高血圧などがあります。肺高血圧が重症化すると手術ができなくなります。
治療を行わない場合、孔が自然にはふさがらず症状が徐々に進行するので、40~50歳に到達できる割合は50%程度といわれています。
また通常、静脈内にできた血栓などは、心臓に流れ着いても肺に取り込まれて処理されますが、それらが運悪く右心房から左心房に流入する状態になると、脳動脈へ流れ込んで脳梗塞や脳膿瘍を引き起こすことがあります。(奇異性脳塞栓症)

新生児や乳児の場合

新生児や乳児でも、左心房から右心房に流れる血液が多い場合には、呼吸困難(要手術)、風邪にかかりやすい、体重が増えない、運動が長続きしないなどの症状が出ることがあります。

心房中隔欠損症の診断と主な治療方法

聴診、胸部レントゲン写真、心電図、心臓超音波検査などを行い、心房中隔欠損症と診断された場合は、さらに詳細な検査を行って手術適応についての検討が行われます。
心房中隔欠損症には、カテーテル治療、外科的治療の2つの治療法があります。

カテーテル治療(アンプラッツアー法)

「アンプラッツアーセプタルオクルーダー」と呼ばれる閉鎖栓を心臓の中に留置します。アンプラッツアーは形状記憶合金の細い線から作られたメッシュ状の閉鎖栓で、真ん中のくびれた部分を心臓の欠損孔の部分に合わせるように入れて、左右の広がった部分で穴の両側から挟みこんで穴を閉じます。

カテーテル治療の欠点

  • 閉鎖栓は金属のメッシュで出来ているため、エッジがシャープな造りになっており、金属アレルギーの方には使用できない
  • 途中で脱落したり、近くの大動脈の壁をずっと圧迫するため孔が開いたりする危険がある
  • 術後は抗凝固療法が必要
  • 長期残留する異物が及ぼすリスク(大動脈に穴が開いて緊急手術になったり、埋め込んだアンプラッツァーの傘が飛んでいく等の合併症)
  • 最近では、施術後何か月~何年も経ってから、偏頭痛や視野の異常(閃輝暗点)があらわれるといった症例も報告されております。
  • 欠損孔の場所や形によって、適応がない場合がある

カテーテル治療の適応

カテーテル閉鎖術が可能なのは2次孔欠損型の心房中隔欠損症に限られます。さらに、欠損孔の大きさや、欠損孔周囲の縁、周囲の構造物との距離によっては、閉鎖栓が安全かつ安定した状態で留置できないと判断され、適応外となることがあります。


心房中隔欠損症(ASD)のカテーテル治療「アンプラッツァー」

外科的治療

右心房を切開し、欠損孔を直接閉鎖、あるいはパッチで閉鎖します。カテーテル治療とは違って、欠損孔の大きさや位置などにかかわらず、確実に欠損孔の閉鎖が可能です。心房中隔欠損症(または卵円孔開存)のみに対するロボット手術は保険適応外となりますが、頻繁に合併する三尖弁閉鎖不全症等の弁膜症があれば、ロボット弁形成術として保険が適用されます。

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