心臓血管外科医渡邊剛の40年の軌跡 ~My Story~

アウェイク手術のストーリー

我々が全身麻酔による手術から、覚醒下で行う「アウェイク手術」へと取り組んできた経緯は次のとおりです。

1998年頃、肺機能が正常人の約10分の1しかない患者さんが外科に紹介されてきました。通常は手術不能症例として全身麻酔もかけられないのですが、この人の手術を何とかできないかと考えていたところ、ある麻酔科医が「全身麻酔をかけずに自発呼吸を残し、手術部位の痛みだけを取り除く硬膜外麻酔法を使ってはどうか」と提案してくれました。手術は自発呼吸のまま意識は保った状態で無事に終わり、退院しました。

この手術方法は肺の悪いひとだけではなく、重症な脳梗塞の患者さんにも有効でした。脳血管に狭窄がある場合、手術中に血圧が低下すると、脳に取り返しのつかない損傷を与える可能性があります。覚醒下で手術を行えば血圧低下による脳の症状を観察できるので、血圧を上げたり、意識が遠のいた時点で手術を一時中断する対策が可能になります。これにより、脳梗塞を未然に防ぐことができます。
このような方法で、私たちは150例以上のアウェイク手術を行い、その良好な成果を報告してきました。

ストーリー
  1. バイパス手術におけるオフポンプ手術へのストーリー
  2. オフポンプCABGを行う上で必要なデバイス「スタビライザー」開発のストーリー
  3. アウェイク手術のストーリー
  4. 完全内視鏡下心臓手術へのストーリー
  5. 外科手術用ロボット“ダビンチ”のストーリー
  6. 薬事承認、保険診療へのストーリー
  7. キーホール手術へのこだわり
  8. 患者さんの気持ちを知るということ
  9. 成功率100%へのストーリー
  10. メール外来を始めたきっかけについてのストーリー
  11. 心臓手術の経験を積む

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