メディア掲載情報2015年5月19日『毎日小学生新聞』
手術支援ロボット「ダビンチ」は、患者のおなかに開けた5か所はどの小さな穴(1~2cm)から、手術器具を取り付けたアームと内視鏡カメラを差し込んで手術をします。医師は、内視鏡の映像を拡大してみながら、少し離れたところからハンドルのようなコントローラーで遠隔操作します。
★傷小さく出血も少ない
これまでの手術は、患者のおなかをメスで切り開き、医師が手を差し入れて悪い部分を切除したり、縫合するのが一般的でした。おなかを切り開くため、出血量が多く、患者の体への負担も大きかったのです。それが、「ダビンチ」を使った手術では、おなかを切り開かないため、傷が小さくすみ、出血量も少なく手術後の痛みも小さくなります。
★3D画像で自由に動く
これまでも内視鏡手術はありましたが、画像が2次元で映し出されるため距離感が分かりにくく、内臓や血管をはさむ手術器具の動きも限られていました。「ダビンチ」は3D画像を拡大でき、手術器具の自由度が高くなりました。その高度な性能は、折り鶴を折ったり、お米の粒に文字を書くことができるほどです。
「ダビンチ」は内視鏡手術では進まなかった心臓手術にも期待されています。心臓は複雑な構造をしていて、常に動いています。せんさいな縫合を要求されているうえ、心臓を止める時間は限られているので急いで行わなければなりません。石川医師は「ダビンチで、それができるようになってきました」と力をこめます。
手術支援ロボット「ダビンチ」は2014年9月現在、世界で約3200代が導入されています。日本では約190台。アメリカが最も多く、日本は2番目です。
★90年ごろアメリカで
「ダビンチ」は1990年前後、アメリカで研究が始まりました。湾岸戦争の戦地で負傷した兵士を、ロボットを遠隔操作して手術できるように開発が進められてきました。それを人が操縦して、より高度な内視鏡手術をする道具として「ダビンチ」が誕生。1999年の医療機器メーカー「インテュイティブサージカル」が販売しています。
日本に導入され始めたのは2005年ごろです。2012年4月、前立腺全摘出手術で保険が適用されるようになり、1台約3億円と高額ですが全国的に導入が進みました。
「人間の手首以上の動きをする」と評判は上々です。しかし、手術をするのは人間。石川医師は「結局は外科医の手の動きをコピーするので、だれでも上手な手術ができるわけではありません。使う人の技量に大きく左右されます」と話します。
この夏には、アメリカ以外で最大となる医師を対象にした「ダビンチ」のトレーニングセンターが東京都江東区に完成する予定です。
★子ども向け医学教室も
ニューハート・ワタナベ国際病院では昨年から「浜田山ヒルズ少年少女医学教室」を開いています。小中学生が、手術室から生中継される心臓手術をスクリーンで見学したり、手術器具や電気メスなどをさわったりしました。「最先端医療の現場を見て、興味を持ってもらいたい」と石川医師は話しています。
今年は7月24日に開催する予定です。小学4年生から中学3年生の児童、生徒と保護者30組60人を募集します。問い合わせは同病院(03-3311-1119)へ。