渡邊剛について論文のご紹介

  • タイトル本邦におけるロボット支援下心臓手術の創始と現状
    (英題:Current Satus of Robot-assisted Cardiac Surgery in Japan)
  • 著者 渡邊剛、石川紀彦
  • 発表年 2022年
  • 掲載誌 胸部外科75巻7号 特集 ロボット支援下心臓手術の現況
  • 抄録 われわれは1999年に世界に先駆けて完全内視鏡下心拍動下の冠状動脈バイパス術 (coronary artery bypass grafting: CABG) を行った。これは当時の内視鏡を用いた世界初の心臓手術であった。その後も内視鏡を用いた新たなアプローチによる小切開CABGなどを多数報告してきた元来、心臓手術は胸骨正中切開アプローチで心停止下に行うものが標準術式とされてきたが、1993年ころより胸骨正中切開を回避し、minimally invasive cardiac surgery (MICS) と呼ばれる、主に肋間開胸アプローチによる心内手術や、off-pump coronary artery bypass (OPCAB) として普及した心拍動下冠状動脈バイパス術という低侵襲化の流れがすすんだ。しかしいずれも直視下の手術の延長であり、われわれのように内視鏡を用いた心臓手術を行う外科医は世界でもほとんどいなかった。
    他領域が内視鏡手術を導入し低侵襲化がすすむ一方で、心臓手術での導入が遅れていた理由は、① 対象とする臓器が拍動し迅速な手技を要すること ② 術野が狭いこと ③ 繊細な縫合結紮を求められることなどの困難さゆえである。1999年までに行ったわれわれの内視鏡手術は整容性に優れているだけでなく、輸血合併症を軽減し早期の社会復帰を可能にしていたが、きわめて高度な手技を要し、一般化するにはむずかしかったものと考えている。同じころに Intuitive Surgical 社(Sunnyvale) の手術支援ロボット da Vinci サージカルシステム(以下、da Vinci) が上市して内視鏡手術そのものの大きな変革が起こり胸腔内手術のみなく心臓外科領域での安全な内視鏡手術がより現実的に実現可能で身近なものになってきた。われわれ Team Watanabe では da Vinci を用いた心臓外科領域の手術を2005年より開始して以来2022年3月までに1、200 例を超える症例を経験している。内訳は70%以上が僧帽弁形成術ほかの術式として心房中隔欠損閉鎖術、心臓腫瘍摘出術、これに心房細動に対するmaze手術などが併施されている5~8)。残りの約20%弱がCABGである。初期例からほぼ全例を1cm以下のポートのみで施行しており、これをキーホール心臓手術と定義し行っている。その中でも僧帽弁手術はロボット支援下心臓手術のもっともよい適応の術式の一つといえる。

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