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心臓手術について 心臓手術を安全に受けましょう

はじめに

心臓手術は“危険な医療”の代表とお考えではありませんか?
確かに、受ける病院と、疾患の種類や状態、手術の種類などによっては危険を覚悟しなければならない場合もあります。
とくに手術は外科医の腕がほぼ100%手術の成功率に反映されますから外科医を選べば、“安全な医療”、ブランド病院大学病院にこだわれば時に危険な手術になっています。

心臓手術とは

文字通り、心臓にメスを入れる手術が「心臓手術」です。大動脈やなど、心臓の近くにある大きな血管にメスを入れる手術も心臓手術です。
心臓にいきなりメスを入れると、血液が噴出してこれを循環させられなくなるので、心臓手術では、血液循環を一時的に代行する機械「人工心肺」が必要です。
また心臓が動いたままでは手術がしにくいので、多くの手術では心臓をある一定時間とめることが必要です。
そのわずかに時間に完璧に終わる必要があります。最も手術の安全性を決めるのは外科医の手腕です。
「心臓手術は安全か?」という質問は、「よい外科医に巡り会いましたか?」と尋ねるのと同じです。

心臓手術に必要な体力?

ご高齢の方の手術に際して、体力はもつでしょうかと尋ねられることがよくあります。
年だからという理由だけで、手術をやめることは普通ありません。手術が軽くおわれば体力が無くても安全に終わります。手術が大がかりになってしまえば若者でも体力は持ちません。
体力を消耗するのは手術の侵襲度と手術時間です。手術時間は外科医の手腕にかかっています。

合併症

心臓以外の病気がある場合は、手術で病状が悪化したり、余病で命取りにつながったりすることがあります。
そうならないように、あらかじめ状態を把握し、先手を打って準備をしてから手術すると、無用な合併症を避けることができます。

手術前に脳、肺や腎臓、肝臓といった他臓器の機能や、糖尿病その他の全身疾患の有無をしっかり評価します。

熱があるときに手術を受けるのも好ましくありません。心臓弁膜症で人工弁を使用する場合、虫歯があると人工弁に細菌がつくことがあり危険です。

胸のどこを切るのですか?

心臓と肺は胸骨と肋骨という骨のかごの中に納められています。心臓の手術の多くは、胸の真ん中で皮膚を切開し真ん中の胸骨をのこぎりで縦切りにして始まります。
胸骨は縦割りにすると、さらに心臓は心膜で袋状に包まれています。心膜を切り開くと、初めて拍動する心臓が見えてきます。

最近では胸を小さく切り手術をする小切開心臓手術(MICS)方というのがあります。
またダ・ヴィンチというロボットで内視鏡の穴だけで手術をする病院もありますのでよく病院を選んで手術を受けましょう。

人工心肺って何ですか?

心臓の手術では、一時的に心臓の動きを止める必要があります。そのために、まず心臓と肺のかわりをする器械を使います。これが「人工心肺」です。(後述)

まず体で酸素を使い果たした血液「静脈血」を、心臓手前でチューブ(脱血管)を差し込んで体の外に取り出し、人工肺で酸素を与え、「動脈血」に変えます。
次に、人工心臓で動脈に送ります。 そして、心臓自身には全く血液が流れないようにしたうえで、 このような人工心肺に付随した補助手段の開発も開心術の安全性をさらに向上させた大きな要因になっています。

高度な技術を必要とする人工心肺装置の操作は訓練された専門の臨床工学技士が受け持っていますが、近年はこのスタッフが多く配置され、人工心肺操作の安全確保に大きく貢献しています。

心臓は何時間止めても大丈夫?

もちろん短いほどよいに決まっています。最大で4時間とめられますが術後の心機能は悪くなり、生涯悪いままの人もいます。手術がいかに大事か分かるでしょう。

開心術では「心筋保護液」と呼ばれる薬を心筋に注入し、心臓の拍動を停止させます。心臓内部の細かな操作が安全確実に行えるようになるのです。
心筋保護液は心筋の代謝を抑え障害されるのを防ぎます。

血液を固まらなくする薬を飲んでいるが大丈夫?

血液が固まる性質を血液凝固といい、けがをした時などに血を止める大変重要な体の仕組みです。
冠動脈バイパス手術を受ける患者さんの中には抗血小板剤、抗凝固療法を行っている患者さんが多いのです。
ところが、体外循環が終了した後は、縫合した部分の止血処置をして創部を閉鎖する処置に移りますが、この時にいつまでも血が止まらなければ困ります。

心臓手術はほかの手術などに比べて、どうしても出血量が多くなって輸血が必要になりやすく、また完全に出血を止めるために長時間かかることがあります。
しかし、手術前に抗血小板剤、抗凝固療法を完全にやめてしまうと血液が固まりやすくなり心筋梗塞の発作を起こすかもしれないので一部の軽い薬だけを飲んでいただき手術に臨みます。

輸血はしますか?

人工心肺装置では回路の中はあらかじめ生理食塩水などの液で満たしておきますが、薄まりすぎると支障が生じます。そこで、体の大きさと回路の大きさの割合によっては、あらかじめ回路の中に血液を混ぜておく必要があります。

最近の人工心肺装置は小型化し、「無輸血開心術」が可能になっています。しかし、ある程度以上に体外循環時間を必要とする手術や、複雑な手術、癒着のある再手術など、輸血が必要になる心臓手術は少なくありません。

輸血用の血液製剤も最近は、血液を血球、血漿、血小板などに分離し、それぞれの成分を別々にして、安全に一定期間保存する技術が進歩し、また肝炎ウイルスなどの検査結果がすぐに出るなど新しい検査法が導入されたことで輸血の安全性も高まりました。

麻酔について

心臓手術は大部分は全身麻酔をかけて行われます。手術室で静脈注射用の回路を付け呼吸を止めて人工呼吸をします。

肺への空気の通り道である気管まで管を挿入し、その管に人工呼吸器を接続、同時に血圧や静脈の圧、体温、心電図、経食道エコーなど、モニターする器具が取り付けられます。 これらのモニターを見ながら体の状態を最善な状態になるように管理するのが、麻酔科医師の大切な仕事です。

手術の後、ICUで!

心臓手術は比較的深い麻酔をかけて行われることが多く、手術が終了してICUに入室する時点でも、麻酔で眠った状態がしばらくは続きます。
意識が回復した時に、楽に息ができれば、だいたい手術した日の夕方には喉の管が抜けて話ができる状態になります。

ICUに帰ってきてからの呼吸の管理、使用する麻酔薬や鎮静薬、また強心剤や血管拡張剤など、多くの薬を用いた治療も、大きく進歩しています。
その結果、手術後の回復はとても早くなってきました。
現在は早めに自分の呼吸を取り戻し、一般病棟に帰ってリハビリを開始した方が合併症を起こす可能性が低いと考えられています。

傷は痛みますか?退院はいつごろになりますか?

痛みは日を追うごとに確実に薄れてゆきますが、個人差があり、完全に消えるのに数か月かかる場合もあります。
傷の糸は抜糸する必要はありません。
ただしドレーン(心臓周囲にたまった水や血液を体外に導くための管)が入っていたところは、抜いたときに管の通っていた穴を糸で結んで閉めます。
糸やペースメーカーワイヤなどがなくなれば、全身シャワー可能です。

どうしたら回復が早くなりますか?

手術後のリハビリテーションは、できるだけ早期に始めるのがよいとされています。早く歩くことと食事を早期に開始することで退院、社会復帰が早まることがビッグデータからはっきりしています。
できるだけ自発的、積極的にリハビリに取り組むことが、合併症にならず、元気になって頂くための早道なのです。もとの病気や、手術の種類にもよりますが、術後1週間ごろから退院可能となります。

仕事や学校にはいつから復帰できますか?

退院して4週間ほど自宅療養をし、順調なら退院後4か月以内に職場復帰や復学が可能です。
胸骨正中切開の手術では、だいたい術後2か月間で骨がくっつきます。運動の開始はこの2-3か月ぐらいが目安になります。

術後の外来通院は、疾患により通院の頻度は異なりますが、心臓手術で元気になって、全く病院に通わなくてよいということもあります。

心臓手術の成績は?

日本胸部外科学会では心臓手術を行っている全国の施設すべてを対象とした調査を行っています。
手術件数の推移を見ますと、手術件数は年々増加し、この調査が始まった1986年からの17年間で全体の数は約2.7倍に増えました。最近では特に冠状動脈バイパス術などの虚血性心疾患に対する手術が減少し胸部大動脈瘤の手術が増加しています。
この統計で手術成績(手術死亡率)も調査しています。
弁膜疾患、虚血性心疾患、大動脈瘤、については細かい成績を載せてありますのでご参照ください。(後述)

大まかにまとめると2013年の統計では、1年間に合計約5万件の心臓と胸部大血管の手術が行われました。
このうち冠動脈疾患に対する冠動脈バイパス手術、心臓弁膜症とも病院死亡率は約3%でした。成功率で97%前後と高い様には見えますが、死亡率でいえば30人に1人死亡するのですから安全になったとはいえども施設を良く選んで手術を受けなくてはなりません。
いずれはアメリカのように病院名まで公表されることになると思いますが、まだまだです。