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メディア掲載情報2018年4月6日『時事メディカル』

普及に拍車かかるか、ロボット支援手術
「ダビンチに保険」拡大、心臓の弁形成術もOKに

 手術支援ロボット「ダビンチ」を使った内視鏡手術に対する健康保険の適用範囲が4月から一気に広がる。これまでは、前立腺がんと腎臓がんの手術だけだったが、新たに、胃がんや肺がんといった患者の多い病気の手術を含む12件が適用対象として承認されたため。心臓外科分野の弁膜症患者に対する僧帽弁形成術がその中に入ったのも注目点の一つだ。

「保険でダビンチ」新たに12件

 「今回、心臓の弁形成術にも保険が認められたのにはびっくりしました」。金沢大医学部教授時代の2005年、国内で初めてダビンチを使った心臓手術(冠動脈バイパス術)を手掛けた日本ロボット外科学会理事長の渡邊剛ニューハート・ワタナベ国際病院総長は、驚きと喜びを隠さない。

ダビンチ最新型「Xi」(インテュイティブサージカル合同会社提供)。
ダビンチ最新型「Xi」(インテュイティブサージカル合同会社提供)。
医師は制御卓(右)で操作する

 ダビンチは米国で開発され、1999年に販売が始まった。最新機器は第4世代だ。手術する医師は患者から離れて座り、内視鏡の3次元(3D)画像をモニター上で見ながら、ロボットアームの先に付けた鉗子(かんし)などを遠隔操作する。手ぶれの補正機能も付き、習熟すれば精緻な操作が可能だ。厚生労働省によると、国内の医療機関には昨年9月時点で約250台普及している。

 今、最も利用されているのは前立腺がんの手術だ。保険が使えるようになった時期も2012年度と一番早い。「もともとは心臓の冠動脈バイパス術のために開発したと開発者が話しているが、今、世界で最も多いのは前立腺や婦人科の手術。場所が骨盤の奥なので、既存の内視鏡手術だと難しいが、ダビンチによって、より安全にできるようになった」と渡邊総長は説明する。

 日本ロボット外科学会によると、泌尿器科でのダビンチ手術件数は15年に年間1万件を突破。「前立腺全摘術ではほぼ100%ロボットを使う」という病院も増え、先に普及した米国の後を追うように、前立腺がん手術の標準的な術式になってきた。

 16年度には、腎臓がんの部分切除術にも保険が認められた。既存の内視鏡手術よりも「根治性、腎機能温存の面で良好な結果が得られた」として承認された。

 今回、18年度の診療報酬改定に合わせて保険適用が認められた12件は、胃がんや食道がん、大腸がんといった消化器外科から、肺がんなどの胸部外科、子宮体がん、ぼうこうがんのような婦人科・泌尿器科、心臓外科まで幅広い領域にわたる。

 心臓外科では、冠動脈吻合(ふんごう)術は今回の保険の対象にはならないものの、「最もロボットが得意」と渡邊総長が話す心臓弁膜症の僧帽弁形成術や三尖弁形成術に保険が使えるようになった。

増える僧帽弁閉鎖不全の治療に

 従来の開胸・開腹手術よりも体を大きく切り開かなくて済む。出血や合併症が減る。早く退院して社会復帰できる―。一般にダビンチ手術のメリットとして強調されるのは、さまざまな意味で患者の負担が軽くなる手術の「低侵襲化」だ。

 医師の立場からは、既存の内視鏡手術と比べて内視鏡の操作性が高い、手術箇所の立体的な視野が得られる、座ったまま手術できるので負担が軽減される、といった利点が挙げられる。一方で、医師の手先に鉗子の感触が伝わらないという「弱点」を指摘する声もある。いずれにせよ、安全性の担保は医師らの技術習熟が大前提となり、緊急時に開胸・開腹手術に移行する態勢を取れることなど、実施できる術者・手術チームや施設の基準も定められている。

 心臓外科でダビンチ手術を実施している医療機関は今のところ、ごく一部だ。渡邊総長は、保険適用を受けた今後の普及について「胃がんと大腸がんは多くの施設がダビンチ手術の実施に向けて手を挙げており、急拡大する可能性があるのに対し、心臓の弁形成術はスタート時点で実施できる医療機関は限られ、ゆっくり広がっていく」との見方を示す。

医学セミナーで講演する渡邊剛ニューハート・ワタナベ国際病院総長=東京・内幸町
医学セミナーで講演する渡邊剛ニューハート・ワタナベ国際病院総長=東京・内幸町

 渡邊総長らのチームは、これまで450人以上の患者にダビンチ手術を行ってきた。2月時点で集計・公表された446件の手術の内訳をみると、最も多いのが今回、保険が使えるようになった僧帽弁形成術の187件だった。

 僧帽弁形成術は、左心房と左心室の間にある僧帽弁の閉まりが悪くなり、血液の逆流が起きる「僧帽弁閉鎖不全症」などが対象。進行すると心不全につながる怖い病気で、高齢化の中で患者が増えている。

 厚労省医療課によると、ダビンチ手術への保険適用に際し、前立腺がんや腎臓がんは既存技術と比べた「優越性」を認められたのに対し、今回の12件は「既存の技術と同程度」との判断が承認の根拠になった。その背景には「保険が認められないと、ダビンチ手術の高額な費用がネックとなって症例数が増えず、『優越性』についての科学的根拠を確立するのも難しい」という議論もあったという。今後も有効性や安全性の検証を積み重ねていく必要がある。

 心臓手術の費用は、術式や入院日数などさまざまな要因によって異なるが、病院によって1件当たり300万円から1000万円までさまざまだという。保険による患者負担の大幅な軽減で、ロボット支援手術の普及にどこまで拍車がかかるかが注目される。

■心臓弁膜症とは■
心臓には左右の心房、心室という四つの「部屋」があり、心臓に戻ってきた血液は、各部屋を通って一方向に流れ、酸素を取り込んで再び全身へと送り出される。弁膜症は各部屋の間にある弁の異常の総称。手術が必要になるのは大動脈弁や僧帽弁に関する異常が多く、弁を温存して修復する弁形成術や人工弁に置き換える弁置換術が行われる。日本心臓財団によると、推定患者数は200万から300万人に上る。

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