先日、小切開手術(MICS:ミックス)で起こった医療事故についての記事が新聞に掲載されました。そもそもかかる症例が論文として掲載されたことが発端として浮かび上がってきた事例ではありますが、私なりのコメント等をあげたいと思います。

ミックス手術は従来の正中切開手術の大きな傷や胸骨切開に伴う生涯にわたる合併症を軽減すべく、肋間からのアプローチで78センチの傷で手術を行う方法です。

日本でも1995年頃より開始されてきましたが小さい切開後から行うために視野が悪く、長い手術器具を使うために技術的に難しいとされ、弁膜症の手術では10%程度の患者さんが受けるに過ぎませんでした。行う施設もそれほど多くはありませんでした。

しかし2018年に胸腔鏡併用の小切開手術の保険点数が上がったことから、多くの病院でこの手術が広まり現在では僧帽弁手術の場合は40%との患者さんがこの手術を受けています。大動脈弁置換術では9%前後です。

この手術の技術的なポイントからすると従来の手術器具よりも長い器具を使い、2次元内視鏡を使って手術操作をする方法です。心臓以外では胆嚢摘出や胃がん手術、肺手術など広く行われるようになっています。

心臓外科領域では作業が細かく、血管吻合したり弁を形成したりする複雑な手技が多いため、ガン病巣を切除摘出するような手術とは異なります。

習熟するまでに多くの経験を要することと心臓手術では時間制限があるので手際良く上手に手術を終わらせなくてはなりません。特に今回問題となったのは心臓停止している時間が非常に長くなった事です。

高い技術を持った外科医が行えば1時間弱の時間で終わらせることができる手術でも、技術の劣った医者が行えば5時間6時間かかり、結果的に命を落とすと言う実に単純な話です。小切開手術そのものが悪いわけではなくあくまで外科医の資質により、患者の運命は決まります。

国民皆保険制度の中でどの医師が手術をしても保険点数が同じであること、患者さんはフリーアクセスでどの病院にも行き医療受けることができると言う事から考えれば、制度的に稚拙な術者を退場させることは難しいと思います。受ける患者さん本人が病院及び外科医の腕を見極めて受ける事が大切と考えます。