先日、『誰も書かない心臓外科専門医認定試験』を書かれた日本記者クラブ会員の石岡 荘十さんが、新しい記事を書かれました。
今回も大変興味深い内容となっていますので是非読んでみてください。
(2012年1月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp )
以下引用
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乱立する心臓外科手術病院 ~7割は危ない病院~
高齢社会の宿疴とでもいうべき心臓疾患で外科手術を余儀なくされる患者は、日本では年間ざっと6万人にのぼる。これらの患者の手術を請け負う病院・施設は、2004年当時、813施設だった(厚生労働省統計)が、その後6年間で100施設以上が新たに開業。2010年現在、942が心臓血管手術の看板を掲げて乱立している(同省統計)。単純に計算をすると、病院施設1ヶ所当たりの手術数は年間63件ということになる。
じつは乱立する病院医手を焼いた国は2002年、「冠動脈バイパス手術+人工心肺を使用する手術」が年間100例に満たない施設では、手術料を30%減額するという施設基準を設定したが、そんな締め付けもなんのその、心臓手術の看板を掲げた病院がつぎつぎと新たに開業し続けている。手術料を3割カットされても心臓手術病院が増え続けるのはなぜか。
考えられる原因は、施設が貧弱であろうと専門医が未熟であろうと、いま心臓疾患の患者は絶えることがなく儲かるからだ。網を張って待っていれば無知な患者が迷い込んでくる可能性が高い。医療問題や業界事情に疎い無邪気な心臓病”適齢期”の方々、団塊世代という700万人のカモの大群が眼の前をひらひらと飛んでいる。この”マーケット”でひと稼ぎするビジネスチャンスを見逃す手はないという心理が働いているからだとしか思えない。
2004年、日本胸部外科学会など心臓手術に関連する3つの学会が「心臓血管外科専門医資格認定機構」を発足させ、専門医の資格を認定するとともに、施設基準を決めている。この基準は「症例の多いところほど、手術成績が良好である」という欧米の考え方を根拠にしている。
同機構は専門医を育てるための比較的大きな病院466ヵ所を、「修練施設」と認定している。このうち認定基準である年間100例をクリアしているところ(基幹施設)は、332施設(日本胸部外科学会)。心臓手術の看板を掲げている病院942のうち7割近くが”危ない”病院、看板に疑問符がつく施設ということになる。年間100例をクリアした基幹施設は、機構のホームページで確認することが出来る。( http://cvs.umin.jp/inst_list/inst.html )
イザというときにどこに駆け込むか。自分の住まいの近くにある、基幹施設をいまから確認しておけば役に立つ。
心臓血管外科専門医資格認定機構の幕内晴朗代表幹事(聖マリアンナ医科大学病院長、心臓血管外科教授)は「修練施設を徐々に減らそうとしているが、一気にこれをやると大混乱になる。北海道、東北、四国、九州などでは患者さんのアクセスが悪くなり、助かる人も助からないということになるかもしれない」という。
医療の世界では小児科、産婦人科を始め医師不足と病院の相次ぐ廃業が大きな社会問題となっている。その一方で、真血管外科だけは多過ぎる専門医の存在が患者をリスクにさらしている。<「過剰な医師数こそが疫病神」と叫ばれてきた>(慶應医学81巻2号 平成16年6月)が、手術実績の少ない医療施設もまた心臓疾患患者にとっては疫病神なのである。
欧米では一施設で1000例をこなす所もざらだ。専門医は1人で年間150例から250例を手がける。こんな状態の改革は遅々として進まない。だが、大手マスコミのなかでこの惨状を突っ込んで取り上げたところはない。業界の動きも鈍い。不思議なことといわねばならない