心臓手術をこれから受けようとしている患者さんで医師を選んで手術を受けられる患者さんがどれ位いるのでしょうか?
日本では心臓手術をする病院は500とも600とも言われています。心臓手術は年間5万件ですから1病院では100例が平均です。日本胸部外科学会は毎年施設に手紙を出して過去一年の手術成績を報告させていますが、それによると自己申告ですから本当のところは分かりませんが、冠動脈バイパス手術も弁膜症も手術死亡率は3%弱です。97%の成功率となります。冠動脈バイパス手術であれば3本つないだのに1本しか流れない、弁膜症では3例に1例は再開胸というような大学病院も沢山あるのです。
では平均が97%の成功率であれば、正規分布をしたとすると死亡率0.5%以下、つまり内科のカテーテル治療の死亡率に匹敵する成績の手術が出来る病院あるいは患者さんはどれ位いるかというと、5万人の約5% 2500人くらいしかそのよい手術を受けていないことになるでしょう。
5万人の患者さんのうちたったの2500人しかよい治療を受けていないのはなぜか?

この理由は簡単です。患者さんや家族が内科医から紹介された外科の病院の成績を知らされず、また知ろうとせず手術を受けるからなのです。内科医は自分の病院の外科の先生の成績をもちろんうすうす知っています。それでも他院に紹介がしにくい状況があるのです。それは

1.緊急の時にすぐ頼める状況は作っておきたいのでしょうがなく軽症例は送る。
2.他院に紹介すると院内の立場が悪くなる。
3.他院に紹介するのは手続きが面倒だ。
4.よそに行かれるプライドが(本人も、患者も)許さない。
5.飲み友達の奸智にたけた外科の先生に頼まれてる。
6.成績など何も考えていない。
7.未熟な自院の外科医を育てたい。

でおそらく1,2,3が最も大きな要因です。

理由1,2は気持ちはよく分かります。
3 も事務手続きをかんがえると分かります。とにかく他院は紹介状、データの焼き増しなど院内であれば  紙一枚ですが大変です。
4.も大きいですね、大学病院ではタブーです。東京の有名私立でもそれは相当です。患者さんに八つ当た  りする医師も実はとても多い。
5.口説かれたらひとたまりもありません。蛇に見込まれた蛙状態です。
6.以外に最近多いのはこのタイプかもしれません。従順で役人タイプ。人の幸せなど関係ない人達です。
  自院の外科の成績がよければ問題はありません。
7.これは時折眼にします。こんな内科医に育てられたら外科医は本望です。ですが外科医の自身の資質が  良くないと実現しません。

はなしがそれましたが、95%の患者さんはそういう手術を受けられている事になります。これは患者さんの命、時間、体力や医師自身の時間の無駄遣いとなり、得をするのは病院だけということになります。

まず手術が決まったら、すぐにその病院の治療成績を聞き、悪かったら他を探すことをお勧めします。それが自らの身を守ることになるのです。