心臓血管外科医 渡邊剛 公式Webサイト
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メディア掲載情報2015年7月29日『coFFee doctors』

成功率99.7%を支える原動力は、患者さんを思う心

患者さんの体にやさしい手術を生み出し、世界初の手術を成功させ、新たな医療環境の開拓に尽力してきた心臓外科の名医がいます。渡邊剛先生は、手術支援ロボット「ダビンチ」による心臓手術を日本で初めて行ったロボット手術の第一人者。41歳の若さで金沢大学の教授に就任した後は、当時患者死亡事故が続いていた東京医科大学の教授も兼任で務め、心臓血管外科の信頼を回復させました。
数々の難しい手術を成功させてきた陰には計り知れない努力と経験がありますが、それを支えるのは「患者さんに負担のかからない手術をしたい」「自分にできる最も良い手術をしたい」という思いです。その理想を実現させるため、2014年には「ニューハート・ワタナベ国際病院」を開設しました。渡邊先生の心臓手術の成功率は、全国平均の97%を大きく上回る99.8%。それに満足することなく、さらなる高みに挑戦し続ける渡邊先生の目標は「全ての人ができるだけ早く、歩いて家に帰れる心臓手術」です。

「本当に良い医療」を世の中に問う

‐ブラックジャックに憧れて医師を目指したそうですね。

ブラックジャックは子どものころに読んで非常に感動した漫画の一つです。同級生の3分の1が東大に行く中学校に通っていましたので、自分も東大に行くんだろうなと思っていました。では東大に行って何をするか? 学校でも塾でも、周りには優秀な人たちがたくさんいました。自分が彼らに勝てる仕事は何だろうと考えていたときにブラックジャックに出会ったわけです。
ブラックジャックは三流の大学を出ているけれども世界一手術がうまくて、世界中の教授たちがその腕を認めている。そういう存在になれる仕事は外科医をおいて他にはないだろうと考えました。同じ医師であっても内科医では他の人との差がつけにくいだろうと、子どもながらに思ったんですね。心臓外科を選んだのはもっと後になってからでしたが、外科の中でも腕の差がつくのはきっと脳外科か心臓外科だろうから、そのどちらかに行こうということは決めていました。
教科書に載っていない手技も知っていて、自分の頭の中で考えた手術を思い通りに施すことができ、難しい状態の患者さんが治っていく。手術の真髄を知っているけれどもアウトローな存在。ブラックジャックのそういうところに魅力を感じていましたね。私自身も実際に大学教授を辞めているから、アウトローなんですよ。そういうマインドは子どものころからずっと持っているわけです。

‐なぜ大学教授を辞めようと思ったのですか?

旧態依然とした体制に疑問を感じ、教授になった後のかなり早い段階でもう次を見ていました。でも私を教授に選んでくれた人たちのことを思い、10年間はしゃかりきに、できるだけの奉仕をしようと決めました。
公務員でいた時はつらかったですね。他の病院へ1週間に1回手術の応援に行くと、行き過ぎだと注意される。お金が欲しくて行っているわけではなく、手術してほしいという患者さんがそこにいるから行くのだけれども、説明してもわかってもらえない。委員会や会議がいくつもあり、本当に必要かどうか首をかしげたくなるような仕事も多く、新しいことに取り組むにもいろいろと手続きが必要で非常に時間がかかります。やりたいことはたくさんあるのに、これでは生命時間が足りない……と、もどかしく思っていました。 それでも大学病院にいた間に、いくつかの新しい医療を行うことができました。一般的には全身麻酔で行っている心臓手術を胸部のみの局所麻酔で、患者さんの意識があり話もできる状態で行う「アウェイク手術」や、世界初となった完全内視鏡下での心臓手術、そして手術支援ロボット「ダビンチ」の導入などです。
新しい手術を行おうとした時には、批判を受けたこともあったと聞きました。 「危険な手術だ」「実験医療ではないか」など、大学の中や学会会場だけではなく同じ心臓外科医から言われたこともありましたが、つらさは全く感じませんでした。どうすれば患者さんの負担を減らせるか、どうすればもっと早く治せるかを考え続けて行き着いた手術ですが、相手には相手の哲学があります。大切なのは患者さんにとってより良い手術を行うことですので、それを障壁と感じることはありませんでした。
人工心肺を使用せず心臓を動かしたまま冠動脈バイパス手術を行う「オフポンプ手術」(心拍動下冠動脈バイパス手術、Off-Pump Coronary Artery Bypass:OPCAB)を始めた時は、外科学会で批判されたこともありました。しかしこれは後に外科の教科書にも載り、現在日本で冠動脈バイパス手術を受ける患者さんの約7割がこのオフポンプ手術を受けています。天皇陛下の冠動脈バイパス手術もオフポンプで行われました。ロボット手術やアウェイク手術はまだそこまでは行っていませんが、30年もすれば同じように標準化していくのではないでしょうか。

‐開業した現在はいかがですか?

自分が思った通りの医療を行い、世の中に対して発信や提案ができることは開業して非常に良かった点ですね。ダビンチのようにまだ保険で認められていない医療を標準化して広めていくこともできますし、海外では当たり前になっているにもかかわらず日本ではまだ行われていない手術を行うこともできます。開業することで自分が良いと思う医療を世の中に問うことができるわけです。
 新しい手術を一から開発することは難しいだけでなく大変なことでもありますが、私はそれを全て大学でやってくることができました。これから先は患者さんがより良い手術を受けられるように、安全に行えるようになった新しい技術を実際の臨床の場に生かしていくことが私の仕事だと思っています。

ダビンチ手術の先駆者

‐手術支援ロボット「ダビンチ」を使った心臓手術の特徴を教えてください。

患者さんには、「骨も神経も血管も切らず、体に小さな穴を空けるだけで手術ができます。傷が小さいので出血が少なく、痛みもないのですぐに家に帰れますよ」とお話しています。ロボット手術と言っても、ロボットが自動で手術をするわけではありません。先端に手術用器具を付けたロボットの腕を患者さんの体に空けた穴から入れて、人の手で行っているのと同じ手術を行います。手術台から少し離れたところでロボットを操作するのは熟練した外科医ですし、患者さんの周囲には助手の外科医やナースが付いて手術をサポートします。ですから特別に変わったことを行っているわけではないんですよ。
一般的に行われている心臓外科手術では胸の中心を大きく開き胸骨を切るため、手術後2カ月間は運動ができません。傷口から感染を起こすリスクもあります。しかしロボット手術であれば傷口が小さくて済み、たったの数日で日常生活に戻ることができます。 患者さんの負担が少ないにも関わらず、ロボットを使った心臓手術が広く行われていないのはなぜなのでしょうか。 二つの問題があります。一つは、外科医の技術がロボットを扱えるレベルにまで到達していないことです。そしてもう一つは、ロボットでの心臓手術が保険で認められていないことです。ロボット手術が保険で認められるためには、外科医の技術が上達しそれが標準化されることが必要です。「自分は手術に自信があるし、ロボット手術は患者さんにやさしいからやるぞ」という医師が何人も出てきてロボット手術が標準化されれば、保険診療として承認されるようになると思います。
現在は、ロボットで心臓手術を行うと入院基本料や薬剤費など通常保険で認められている部分までもが全て自己負担になってしまうため、300万円近くの費用がかかります。せめてこれが先進医療として認められて保険診療と併用できるようになり、全額自己負担がロボットの部分だけになれば、少しは受けやすくなるはずです。実際に、300万円は払えないけれど、保険で認められている手術より100万円高くなるぐらいであればロボットでの手術を受けたいという方はたくさんいらっしゃいます。
ダビンチは日本に200台ほどがあり、有数な病院の多くには既に導入されています。これだけたくさんあるのだからロボット手術を希望する患者さんのためにも早く保険診療に持っていけるといいのですが、ダビンチの操作にはやはり難しさも伴います。外科医なら誰でもできるというわけではなく、特に心臓手術においては相応のトレーニングと経験が必要です。

‐先生はどのようにして、そのような高い技術を身につけることができたのですか?

30代前半に留学したドイツでの経験が大きいですね。ハノーファー医科大学では教授も准教授も講師もレジデントチーフも、非常に手術がうまかった。私はうまい人の良いところを全部チェックして、その日のうちにノートにメモしていました。ヘタな手術を見ていてもうまくはなりませんが、良い手術を見ていればきちんとうまくなります。ドイツの大学は手術件数も多く、日本では1日1件程度だった手術が、毎日5件行われていました。昼はずっと手術をして夜にその内容を記録し、その後は夜中までブタの心臓を使って何度も練習をしたものです。ドイツでの2年半で2,000件の手術を経験し、当時の日本ではほとんど行われていなかった心臓移植手術も執刀しました。
うまくいかなかった時期もありましたが、失敗するたびにどうすれば良くなるかを常に考えてきました。平均的な心停止時間の半分以下の時間で手術を行っていることも、心臓手術の成功率99.7%という数字も、全てその積み重ねからきています。 しかし世界にはもっとすごい手術を行っている医師がいます。患者さんのためにできることはまだまだたくさんあるのです。心臓外科医であるからには他の人よりヘタなんじゃないかと言われたら嫌ですから、誰よりもうまくなるための努力は常にしています。でも、楽しく仕事をしているのでそれを苦しいと感じることはないですね。この仕事が好きですし、私にできることは手術しかないので、それを仕事にしてたくさんの人に喜んでもらえることはありがたいことだなと思っています。

賢く情報を取り、良い医療を受けてほしい

‐心臓外科医として、患者さんに伝えたいことはありますか?

良い医師を探す努力を惜しまないでほしいということですね。自分や家族が病気になったときには、必死になって良い医師、良い治療を探してほしいと思います。医師としても自分の体のことを必死に考えて来てくれる方がいるのは大変うれしいものです。
日本では毎年約5万件の心臓手術が行われています。日本全体の成功率は97%ですので、残念ながら年間に1,500人ぐらいの方が亡くなられていることになります。私はこのうちの1,000人ぐらいは、うまく手術をすれば助かるのではないかと思っています。医療費の面から言っても、技術の優れた病院で手術を行えば400万円で済むところを、病院によっては合併症を起こしてしまったりして700万円かかったりすることもあるのです。また病院を選ぶときには、大きな病院なら安心というわけではありません。例えば1,000床ある病院でも心臓外科だけをみれば40床しかないところもあり、そうなると心臓外科が専門の45床の病院のほうが優れていることもあります。患者さんには賢く情報を取って本当に良い医療を受けてほしいと思います。
私はメールで病気の相談を受ける無料の「ネット外来」を5年以上前から開いてきました。現在までに2,500名以上から相談を受けています。全てのメールにいちいち返信するのは大変なのでは、とよく言われるのですが、お互いにある程度の情報を得てから外来でお会いできる分、診察がスムーズに進みます。相談内容は深刻なものも多くありますが、患者さんとのメールのやり取り自体は私の楽しみの一つです。
ネット外来には既に手術を終えた患者さんから相談が来ることもあります。外科医がお互いの技術レベルを見比べたり競争したりすることはありませんが、患者さんのお話を聞いていると、他の病院でひどい手術を受けてきた方が実際にいることが分かります。心臓の弁を治す手術をしたのに、次の日からもうジャジャ漏れだったという方もいました。基本的に心臓手術は1回受ければそれで終わりですから、患者さん同士で情報が行き渡るということはあまりありません。このような背景もあり、心臓の病気を抱える患者さんにより良い手術を受けるための情報を知ってもらい、手術の選択肢を広げてほしいとの気持ちで始めたのが、このネット外来なのです。

‐最後に、今後の目標を教えてください。

「全ての患者さんが3日で帰れる」、そんな手術ができたらいいですね。傷が小さくて痛みもないからもう家に帰りたい、と患者さんのほうから言い出したくなるような手術を編み出したいと思っています。どうすれば早く帰れるか、どうすればもっと早く傷が治るか。表面だけでなく内部も含めて、手術で傷ができる場所をいかに少なくするか。そういったことを常に考えながら、手術成功率100%を目指しています。私にとっては患者さんが100%元気になって帰ってくれることが当然のことですから。

PROFILE
渡邊 剛(わたなべ ごう)
ニューハート・ワタナベ国際病院 総長

1984年金沢大学医学部卒業後、金沢大学附属病院第一外科に入局。1989年ドイツのハノーファー医科大学に留学、ドイツ心臓外科の父と呼ばれるハンス・G・ボルスト教授に学び、2年半で2000件の心臓手術を経験。チーフレジデントとして活躍し、日本人としては最年少(32歳)で心臓移植手術を執刀。1992年に帰国、金沢大学附属病院第一外科を経て、同年富山医科薬科大学医学部第一外科。1993年日本で初めて人工心肺を用いないOff-pump CABG(OPCAB)を成功させ、1998年には日本初となる局所麻酔による患者意識下での心臓手術「アウェイク手術」に成功。1999年世界で初めて完全内視鏡下での冠動脈バイパス手術に成功。2000年金沢大学医学部外科学第一講座(後の心肺・総合外科、現在は先進総合外科)主任教授。2005年手術支援ロボット「ダビンチ」による心臓外科手術に日本で初めて成功。同年より2011年まで東京医科大学心臓外科教授を金沢大学教授と兼任。2008年日本ロボット外科学会を創立し、理事長に就任。2011年国際医療福祉大学客員教授。2013年帝京大学心臓外科客員教授。2014年ニューハート・ワタナベ国際病院を開設し、総長に就任。

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