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2015年3月18日『SBIメディカル春号』 日帰り心臓手術について

最新の医療事情から
State of the art Medicine
日々是好

ニューハート・ワタナベ国際病院
今回は東京国際クリニックの提携病院でもあるニューハート・ワタナベ国際病院の総長・医学博士の渡邊剛(わたなべ・ごう)先生にお話をお聴きした。

目標はデーサージャリ―(日帰り手術)を実現すること

ブラックジャックに憧れて

京王井の頭線・浜田山駅を降り、駅前商店街を通って閑静な住宅街を抜けると、井の頭通り沿いにまるでショールームのような建物がある。今回取材したニューハート・ワタナベ国際病院だ。元は輸入車のショールームだった建物を改築、2014年5月にオ-プンしたばかりだ。総長である渡邊剛(わたなべ・ごう)先生は、心臓外科手術の世界的な権威の一人であり、日本では数少ないダ・ヴィンチ手術(daVinciSurgicalSystem:ダ・ヴィンチ外科手術システム)のオーソリティーだ。
「私が医者を志したのは手塚治虫の『ブラックジャック』を読んでから。助けられない人を助ける、余人にできない仕事ってカッコイイじゃないですか。特に医療の中で、も心臓外科はとがった領域で、出来不出来が生命に直結しまうので特別に難しい。だから面白いというのもあってこの道に進みました」と渡邊先生は語る。今でも『ブラックジャック』は愛読書のようで全巻セットを3セットもお持ちだという。
1958年、東京生まれの渡邊先生は長く母校でもある金沢大の教授を勤めてきた。先進医療へのこだわりが強い渡邊先生だが、大学病院の組織の中ではなかなか進めにくかったそうだ。しがらみや出る杭は打たれるの人間関係、権威主義など、まさに『白い巨塔』を地で行く世界。それならば自由に先進医療を進められるように独立しようと思い立ち2014年にニューハート・ワタナベ国際病院設立へとこぎ着けた。「杉並区は人口が多い割に心臓の病院が少ないんです。そういった地域の市場調査も手掛けてこの地を選びました」。

ダ・ヴインチとの出会い

1999年、世界で初めて内視鏡によるバイパス手術を行なった渡邊先生は、この手術の論文を医療分野における世界的権威の雑誌『ランセット』に発表する。 ちょうどその頃、内視鏡を発展させた機械であるダ・ヴィンチが開発される。ダ・ヴインチとの出会いは渡邊先生にも衝撃だったようだ。
「この機械だったら心臓外科だけでなく外科の世界そのものを変えられるだろう。」 いち早くダ・ヴインチに触れたいという思いが募る。従来の内視鏡は挟む・切る・持つを行なうだけだが、ダ・ヴィンチはフリーダムレートが非常に高いのが特徴。関節の先に関節があり、それらをいくつも複合的に動かせる。モーションスケーリングでモニターを観ながらバーチャルに直感的な操作が行なえる。「内視鏡とダ・ヴインチを比べると黒電話とiPhoneくらいの違いがありますね。直感的に触れるという意味ではiPhoneみたいです。ただし軽自動車とFlマシンくらいのポテンシャルの差もあります。Flマシンって誰でも運転できるものではないですよね。だから下手な人が扱うと取り返しの着かない事故にもなりかねない。そういう難しさはありますが、より手術の上手い人がトラブルシューティングやセーフティーネットを張った上で行なうにはとても有用なものです」と語る。
現在、ダ・ヴインチ手術について厚労省はその使い方を制限している。保険適用になるのは泌尿器のみ。それ以外の分野では自由診療になってしまう。なぜ心臓手術に使えないのか?お役人は「心臓手術は難しいから」と答えるが、外科医でもない役所の人に何が分かるのだろう。渡邊先生曰く「内視鏡よりも簡単になっています」とのこと。ダ・ヴインチは身体の奥深くの手術が得意であり、実際には日本でも自由診療で胃ガン、腸、肺、甲状腺、肝臓、耳鼻などの手術に使用されている。日本では140台程度購入されており、世界第2位のダ・ヴインチ保有国になっている。「しかし先ほどのような理由であまり使われていません。お金はあるから買うけれども使われていないってもったいない状況ですね。自由診療でも良いから使うという医師が少ないんです。医師のフロンティア精神が足りないんだと思いますよ。」
元々手先の器用だった渡邊先生だが医者の素質について外科医は手先の器用さが必要と説く。しかし現実には下手な医者も多い。「だから良い病院なんて企画で本が出るんです。(笑)」確かに大学医学部に受かり、国家試験にも受かる、ということで勉強はできるのだろうが、勉強しかできない医師が多い。しかし外科手術には自然現象を理解しないとダメ。人間も自然現象の延長線上にあり、理解せずには本来手術できないはず。だから医師も玉石混合が現実だそうだ。

デーサージャリ―実現と患者さんの満足

「これからの心臓手術は身体に優しい手術がより増えていくと思います。切開の箇所も小さく、その数も5個から1個へとダ・ヴインチの導入でどんどん減っています。そこまで進化すると患者さんも手術を受ける気になりますよね。いずれはデーサージャリー、日帰りでの心臓手術を受けられるようにしていくのが目標ですね。ちなみにトルコではすでに行なわれています。朝来て手術をして夕方に帰る。これはダ・ヴィンチでの症例ではないですが、傷を小さくし短い時間で行なえば可能な話です。ただし私は患者さんの気持ちを大切にしたいんです。果たして患者さんはどういう気持ちで退院に向うのか?物理的に早く退院させることは難しくありません。現在のダ・ヴィンチ手術でも3日で帰れます。でも、気持ちよく満たされた気持ちで帰れるようにするにはどうしたら良いでしょう?ごはんを美味しく食べられて、痛みが無くて、内なる活気が湧いてくる。最低、この3つが揃うくらいまで入院させてあげないと退院はお勧めできないんです。それらをクリアして、デーサージャリ―を実現し、傷の小さい手術を行なう。そしてこの病院で1年間に2,000人の患者を手術するというのが目標ですね。現在、年間250人のペースです。2,000人というのは今の8倍ですから物理的には可能だと思います。100倍とかっていう途方もない数字ではありません」と今後の目標を語る。なおニューハート・ワタナベ国際病院の平均の入院回数は1週間~10日だそうだ。全国統計によると在院日数は一番少ない病院だという。
冒頭触れたようにニューハート・ワタナベ国際病院はまるでショールームのようなたたずまいた。しかも病室はまるでホテルの一室のような美しさ。そこにも渡邊先生の強いこだわりがある。「入院中はやはり快適に過ごしていただきたいんです。短時間で退院するという考え方と相反するかもしれないですが、素晴らしい部屋で身も心も癒されて帰っていただきたい。どこの大学病院ヘ行ってもそういう満足感は得られません。だから病室はかなりこだわって作りました。杉並という地域に根ざした部分を考慮して作った病院ですが、患者さんの7割は実は全国区です。中には海外からの患者さんもおりロシア、インドネシア、中国、フィリピンなどから来院があります」。また食事にもこだわっている。料亭の料理人を雇い、患者さんに食欲が湧き、早く帰りたくなるような食事を提供しているという。手術の次の日の朝飯が一番美味かった、という人も多いのだとか。「美味しい食事を出してよかったと思えますね。我々スタッフも食堂で同じものを食べていますがやはり料亭の味は美味い。塩分制限を除けば患者さんと、ほとんどいっしょの食事です」。
今回この病院を取材で訪れて思ったのは、スタッフの方々の明るさとしっかりした挨拶だ。このあたりも受付もホテルみたいにしようという渡邊先生のこだわりが感じられる部分である。心臓外科だけでなく総合診療によって全身の診断のできるニューハート・ワタナベ国際病院、日本で最先端の医療を体験できる病院だ。

Profile
渡邊 剛(わたなべ・ごう)
医療法人社団東京医心会
ニューハート・ワタナベ国際病院総長・医学博士
金沢大学医学部卒業後、同大学院修了。同大教授、東京医科大学心臓外科教綬(兼任)などを経て2014年にニューハート・ワタナベ国際病院を設立。趣味は自動車のカスタマイズ。手先の器用さを活かし数々のクルマの改造を手掛ける。ちなみに外科の手街道具の自作もお手の物だ。休みの日は5人のお子さん(全員男の子)と遊ぶのが楽しみ。1958年、東京生まれの56歳。

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