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2014年12月31日『集中』心臓手術成功率は99.8%の高度専門病院

心臓外科医がつくった高度専門病院の挑戦
~世界最高水準の治療を行い手術成功率は99.8%~
渡邊 剛 ニューハート・ワタナベ国際病院(東京都・杉並区)総長

心臓を中心とした胸部疾患の高度専門治療を行う「ニューハート・ワタナベ国際病院」が2014年5月、開院した。総長の渡邊剛氏は、日本初の心拍動下バイパス手術や、世界初の完全内視鏡下冠動脈バイパス手術を行い、覚醒下冠動脈バイパス手術を開発した心臓外科の世界的名医である。大学教授の職を辞し、この新しい病院をつくることで、何を目指そうとしているのか。熱い胸の内を語っていただいた。

-どのような病院を目指しているのですか。
渡邊:全ての大学病院や総合病院をデパートに例えるわけではありませんが、デパートの中のお店では、最高のクオリティーを持つ商品だけを並べることはできません。医療も同じで、デパートのように何でも扱うところでは限界があると考えました。すべてにおいてハイエンドな治療を提供するには、やはりある分野に限った病院が必要になります。私はこれをブティック病院と呼んでいるのですが、専門店だから最高のクオリティーを誇る商品を並べられるように、専門性の高い病院だからこそハイエンドな治療を提供できるのだ、と考えています。

年間各1000件の手術、カテーテル治療を目指す
-ハイエンドな治療とは?

渡邊:この病院では、今世の中に存在する治療の中で、その患者さんにとって最も良いオーダーメード治療を選んで行うことを大切にしています。希望があれば、自由診療になりますが、ダ・ヴィンチ(手術支援ロボット)手術も行います。ただ、患者さんの希望によっては、健康保険で受けることができ、ダ・ヴィンチ手術のように侵襲の少ない小切開の手術も行っています。心臓疾患や大血管疾患の治療が中心になりますが、それだけでなく、甲状腺や呼吸器の病気に対してもベテランの医師が手術を行っております。

-病床数は43床ですが、最初からこのくらいの規模を考えていたのですか。
渡邊:50床くらいの病院をつくろうと考えていましたから、ほぼ予定通りです。開院から半年で110件程の手術を行ってきました。年間220件のペースですが、それでもまだ半分はベッドが空いています。将来的には、さらに効率化を進めて、年間1000件程度の手術が行えると考えています。病院をつくるときに考えていたのは、1年間に手術、カテーテル治療をそれぞれ1000件くらいできるような病院にしようということでした。

-43床で年間1000件の手術は可能ですか。
渡邊:手術を受けた患者さんが早く多淫することが前提になりますが、もちろん可能です。入院が短いと病院がもうからないから、もっと長く入院させろという病院もありますが、良い治療をすれば患者さんは早く帰れるのです。早く退院すれば、日常生活への復帰も職場復帰も早くなりますから、患者さんのためにも、早く退院できるきちんとした治療を目指すべきだと考えています。

-大学教授からの転身ですね。
渡邊:大学病院で診療を行っていく中で、ここでハイエンドな治療を提供していくのは難しいと感じていました、もちろん、大学で革新的な医療に取り組んだり、患者に優しい治療を追求できたりしたことは、私にとって意味がありました。ただ、研究もひと段落つき、目指していた治療が確立した段階で、大学でやるべきことはやりつくしたという感じだったのです。教授まで勤めましたが、教授でなければできないこともありますから、それも必要だったと考えております。

-大学では思い通りの医療ができなかった?
渡邊:大学の医学部は教育と研究と診療を行うのですが、国立大学が独立行政法人になったことで、それに経営が加わってきました。それによって、診療に割ける時間が減ってしまったのは事実です。また、心臓外科は経営的に優等生なのですが、その利益を不採算部門に食われてしまうわけです。自分たちが挙げた収益を自分たちの研究に使いたかったのですが、大学はそれを許しませんでした。それによって臨床研究の道を阻まれていたのが、金沢大学を辞めざるを得なかった理由です。

-病院を開院するまで苦労があったと思いますが、資金調達に関しては?
渡邊:苦労はありましたし、大変でしたよ。ハゲタカファンドと呼ばれるような投資ファンドの話にだまされそうになったこともあります。当初はすごいお金持ちの中に、「そういう医療をやるならお金を出そう」と言ってくれる“お大尽”がいるのではないかと思っていました。しかし、結局いませんでした。30人くらいの人に会いました。日本人だけでなく、アラブのお金持ちも華僑もいましたが、うまくいきませんでした。そういう人たちは、医療に関心があるのではなくて、自分のお金もうけにしか興味がないのです。そして、医療がもうからないことが分かって、話が立ち消えてしまうわけです。結局普通に銀行から融資を受けました。

ガラス張りで医療の透明性をアピール
-病院の建物はリノベーション(既存の建物に大規模な改修工事を行い、付加価値を与えること)を行ったと聞いています。

渡邊:もともとあった建物を改装しています。そのため医療機器や内装にお金をかけることができました。ただ、思い通りにならなかったこともあります。私はできれば高い階に窓の外を眺められる手術室を造って、そこで手術したいという希望を持っていました。ところが、2階から上の階は天井が低くて手術はできません。1階に作るしかなかったのです。思い医療機器を搬入するには1階でよかったのですが、もともと自動車展示場だったビルですから、1階がガラス張りなのです。そこで発送を180度転換し、ガラスを鉛が入った放射線を通さないものに替え、ガラス張りの手術室を造りました。手術していないときは、外から見ることもできます。もともt自動車展示場だったからそうなのですが、ガラス張りの手術室は「この病院には隠すものはありません。全てお見せします」というアピールになっていると思います。

-家族が手術を見ることもできるとか。
渡邊:見学室からガラス窓越しに手術室の内部を見ることができますし、術屋のモニターの画面で見られるようになっています。「一切隠しません。みたい方はどうぞ」ということにしていますが、だいたい半分くらいのご家族が見に来ています。

-病院で大切にしていることは?
渡邊:病院というのは建物のようなハードよりも、やはりソフトが重要なのだと考えています。どのような治療を行うのかはもちろん、医療スタッフの技量も、患者さんをもてなすコンシェルジュの存在も重要です。特にこの病院は患者さんが遠くから来ているので、そういう方たちがスムーズに入院し、完璧な手術を受け、スムーズに退院していく、という流れを大切にしています。

ドイツで心臓外科を幅広く学んだ
-心臓外科医になったのは、漫画『ブラック・ジャック』がきっかけだったそうですね。

渡邊:中学生のころに読みました。主人公のブラック・ジャックは外科医なので、自分の腕で患者の命が救われるのです。「自分の力を試せるのはここしかない」と子供心に思ったんでしょうね。手先の器用さには自信がありました。アウトロー的なところも、かっこいいと感じたのだと思います。中学、高校と半分くらいが東大に行く学校だったので、それまでは自分も東大に行くのかなと、漠然と思っていました。しかし、大学を卒業して何になるのかと考えたときに、職業が全く見えてこなかったのです。ところが『ブラック・ジャック』に感動してからは、はっきりと自分の目指す職業が見えてきました。それで金沢大学の医学部に進んだのですが、心臓外科以外は全く考えませんでした。

-心臓外科を選んだのは?
渡邊:心臓外科はうまい下手がはっきりと結果に出ます。そういうところが私にとっては魅力なのです。アメリカという国は技量を認めますから、余人にできない仕事をした人には、高い評価が与えられます。だから、医者の中でも心臓外科医の給料が最も高くて、次が脳外科医で、他の外科はそれよりも給料が安いわけです。日本の医療制度はそうなっていませんから、日本で心臓外科医をやっていても、お金が儲かるわけではありません。しかし、最も大事なのはお金よりも生きがいです、難しいからこそやりがいはあります。医学部に入った時から心臓外科一筋で来たのは、その仕事にやりがいがあったからです。

-ドイツ留学では何を学びましたか。
渡邊:ドイツのハノーファー医科大学の心臓血管外科に2年半留学しましたが、私は移植グループに所属して、実際に執刀もしました。移植グループというのは心臓血管外科のすべてをやるのですが、それがとてもよかったと思います。欧米の病院には、心臓外科といってもバイパス手術しかやらないとか、動脈瘤だけやっているとか、そういったところが少なくありません。その点、私が留学した先は移植もやっていて、心臓のいろいろな病気をやって、肺もやってというところでした。今、日本ではバイパス手術はどんどん減ってきています。それに代わって、弁膜症などの増えてきているのですが、バイパス手術だけやっていたら、現在の状況は辛かったと思います。

-日本の心臓外科の問題点は?
渡邊:施設数が多すぎることです。現在、手術を行っているところが550施設くらいありますが、それを3分の1か4分の1にすべきだと思います。施設数が多いのは、年間の手術数が1桁とか、たまに心臓の手術もやっていますといった病院がかなり入っているからです。年間数百例の手術を行う病院がある一方で、そういう症例数の少ない病院がかなり存在するのが、日本の心臓外科の特徴です。東京タワーから見た街の様子に似ています。高層ビルがいくつかあるけれど、その間に低いビルや平屋の民家が混じっていたりします。欧米の心臓外科はニューヨークの摩天楼のように、高層ビルだけが集まっています。年間数例といった症例数の少ない病院は存在しません。

-こうした違いはどうして起こるのですか?
渡邊:日本では、下手な外科医が手術しても、ちゃんと診療報酬がもらえる仕組みになっています。この医療制度に『問題があるのです。皆保険制度が良くないといっているわけではありません。保険制度はあっていいのですが、手術が出来高払いになっているのが問題なのです。日本の保険制度はどんどん包括型に移行していますが、手術は聖域になっていて、いまだに出来高払いなのです。このままでは、下手な外科医ほどもうかりますから、病院は決して減りません。

-下手なほどもうかるのですか。
渡邊:この病院で心臓の手術を行うと、1件当たり300万円くらいです。全部自己負担してもそのくらいの金額です。ところがひどい施設で手術を行うと、900万円も10000万円も掛かったりすることがあります。手術時間が長くて、出血も多く、肺炎などの合併症が起きたりするからです。そのため、輸血が必要になり、ICU(集中治療室)に入ることが必要になり、合併症の治療が必要になり、入院期間が長くなり、どんどんお金がかかってしまいます。これを健康保険でカバーしているわけです。国民が払った税金と保険料が、下手な手術をしたために膨大な額に膨らんだ医療費をカバーするために使われています。下手な外科医と、それで設けている病院経営者がいることで、医療費が無駄に使われているのです。

-それでも心臓外科の病院を減らす必要がある?
渡邊:心臓の手術を出来高払いから包括型に変えてしまえばいいのです。たとえば血管2本のバイパス手術は200万円とか、心臓弁膜症の手術は400万円といったように決めてしまえば、下手な手術をすれば赤字になるので、たちまち淘汰されるはずです。そうやって、きちんとした手術ができる病院だけが残れば、医療費が無駄に使われなくなるし、何より患者さんのためになります。

全国に八つの病院をつくる
-これからのことを聞かせてください。

渡邊:1つ目の病院が開院したばかりですが、全国各地に八つの病院をつくりたいと考えています。地域によって医療にばらつきがあり、やむを得ずレベルの低い医療を受けている患者さんがたくさんいます。この病院の治療成績は日本でトップなので、各地に拠点をつくり、そこでニューハート・ワタナベ国際病院で行っているハイエンド治療を提供していきたいと考えています。地域のニーズに合わせて、心臓外科だけの病院やカテーテル治療を専門に行う循環器内科の病院があってもいいと思っています。どのあたりにどのようなニーズがあるのか、もうマーケティングは進めています。

-多くの人材が必要になりますね。
渡邊:この病院を開院するときには、金沢大学でチームを組んで治療していた優秀なスタッフが来てくれました。これからの展開に関しては、この病院でトレーニングを積み高い技術を身に付けた人たちが、外に出ていく形を採ります。八つの病院をつくるためには、のんびりしていられません。

渡邊 剛(わたなべ・ごう)
1958年東京都生まれ。77年麻布学園高校卒業。84年金沢大学医学部卒業。89年ドイツ・ハノーファー医科大学心臓血管外科に留学。92年金沢大学医学部付属病院第一外科。同年富山医科薬科大学医学部第一外科。2000年金沢大学医学部第一外科教授。03年東京医科大学第二外科客員教授。05年東京医科大学心臓外科教授(兼任)。11年国際医療福祉大学客員教授。13年帝京大学心臓外科客員教授。14年ニューハート・ワタナベ国際病院総長に就任。日本ロボット外科学会理事長。88年日本胸部外科学会総会でYoung Investigator’s Awardを受賞。00年第12回とやま賞受賞。

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