心臓血管外科医 渡邊剛 公式Webサイト
心臓手術のご相談はこちらまで(24時間対応) ※携帯・自動車電話・PHSからもご利用になれます。
0120-599-119

2014年8月1日『テーミス』ダヴィンチでのロボット心臓手術について

天才外科医ついに独立開院へ

渡邊剛-ロボットを操り心臓手術する男
驚異的なキャリアを持ちながら大学病院を飛び出し年間2千例の手術をめざす

内外の実績を引っさげて独立

日本で唯一人、ロボットを駆使して心臓手術をする渡邊剛氏(55歳)が、教授を務めていた金沢大学を辞任して独立。5月12日、東京・杉並に「ニューハート・ワタナベ国際病院」をオープンした。鉄筋コンクリート5階建ての建物を買い取り、40億円をかけて病院に改造した。
最大の特徴はもちろん、ロボットを使った心臓手術。渡邊氏が「総長」の肩書で総指揮を執る。 “神の手"を持つスーパードクターとか、心臓手術の"ブラック・ジャック"としてマスコミでも紹介されてきた氏だが、とりわけ医療界で耳目を集めたのは手術症例実績の多さだけでなく、次々と繰り出した斬新な手術法だろう。
東京・府中出身で、麻布高校時代に手塚治虫の漫画『ブラック・ジャック』にあこがれ、金沢大学医学部に進学。卒業後、大学医局からドイツに留学、2年半の臨床留学中に2千例にのぼる心臓手術を経験した。 その数もすごいが、30歳ちょっとの若造がチーフレジデント(研修医)として心臓移植手術を手がけるなど、日本ではありえないキャリアを短期問に積んだ。帰国後98年、全身麻酔が常識だった心臓手術を、局所麻酔だけで患者と会話を交わしながら、胸を切り開く開胸手術(アウエイク手術)をやってみせる。03年には人工心肺を使わず、心臓を動かしたままのバイパス手術(心拍動下冠動脈バイパス手術)に成功。41歳で金沢大学心肺総合外科の教授となった。
極めつきは05年、外科手術用ロボット(ダヴィンチ)を使った心臓手術を、日本で初めて成功させたことだ。 ロボット手術といっても、機械が勝手に心臓手術をするわけではない。患者の胸に1センチメートルほどの三つの孔をあけ、そこから電気メスや内視鏡が組み込まれたアームを挿入し、このアームを少し離れたところにあるコンソールと呼ばれるコントローラーから医師が指でリモート操作する。医師が指先を5ミリメートル動かすと、ロボットのアームの先に装着された“指"が1ミリメートル動く。これで人の手より精密な手術ができる。内視鏡手術のカメラ映像は2次元だが、ダヴィンチは3次元で見える。先端にカメラが二つあり、映像が立体的に拡大され10~15倍大きく見える。2センチメートル四方の紙で鶴を折ることもできる。
胸を大きく切り開き、全身麻酔が普通とされる従来の術式と比べ安全な上、患者への負担は少なく、術後も開胸手術の半分、数日で退院可能。日帰り心臓手術も夢ではないというが、なかなか普及しないのはなぜか。

自分の理想と能力を発揮する

それは、ロボット心臓手術が保険の適用外になっているためだ。09年、ロボットを使った冠動脈バイパス手術が「先進医療」に指定されたが、費用は全額自己負担。例えば、四つある心臓弁の一つ、僧帽弁の形成手術は315万円を患者が負担しなければならない。一方、病院サイドにも難問がある。ロボットが高額であることだ。今回、購入したダヴィンチは一式2億7千万円だった。
今年1月現在、東京医科大学病院(東京・新宿)など全国で40台が導入されているが、泌尿器疾患など保険が適応される手術をしているだけで、保険がきかない最先端の心臓手術を行っているのは日本で渡邊氏だけだ。それでも一般消化器外科、泌尿器科、婦人科などの領域で、ロボット手術の安全性と有効性が確認され始めている。いずれ保険診療が認められる日は近いはずだ。
国内の冠動脈バイパス手術の患者平均死亡率が1.15パーセントなのに対し、渡邊氏在職中の金沢大学「チーム・ワタナベ」が残した心臓手術実績の患者死亡率は0.43パーセントという驚異的な数字だ。それがいったい、何が不満で大学を飛び出したのか。
渡邊氏は「大学病院に限界を感じたからだ」という。公立であれ私立であれ、大学病院では許・認可事項、医師の教育、時間外の緊急手術、何もかもが中途半端だとして、氏は10年前から「自由に自分の理想。能力を思いっきり発揮できる治療環境を実現したい」と考えていたのだ。

心臓疾患治療のメッカ誕生へ

問題は資金調達だが、大手の銀行からはすべて「担保がない、実績がない」と門前払いを食らった、だが、地方銀行の北國銀行と群馬銀行が昨年3月、手を上げた。大手金融機関には形が見えない医療の将来性の評価能力は期待できない。「彼らにわかるのは土木工事と公共工事だけだ」と皮肉る渡邊氏は「だから踊って見せるしかなかった」という。
そして開院から40日たった6月末現在、治療・入院患者数60人。高額な自己負担にもかかわらず、3人がダヴィンチによる僧帽弁形成術を選択した。通常の開胸手術24例。年間手術症例数は当初、初年度は約100例と見込んでいたのが、このペースだと年間200例を達成できそうだという。しかし夢はこれに留まらない。今後2年ほどをかけて年間400例以上の心臓手術を中心とした最先端医療を実現する。さらにその後、あと二つ病院を造り、還暦と向き合う4年後には年間2千例の心臓手術を手がける体制にしたいという。
わが国で最多心臓手術症例数を誇るのは.榊原記念病院(東京・府中市)だ。12年の開胸手術の合計は1千例症例だった。だが、医療ジャーナリストの石岡荘十氏は「渡邊氏の"野望"は絵空事ではない。既存の心臓病専門病院を凌ぐ心臓疾患治療のメッカが誕生することになるかもしれない」と大きな期待を寄せる。

メディア掲載の一覧に戻る