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僧帽弁手術(弁形成術及び弁置換術)について

20年ほど前までは、僧帽弁に障害が起こる病気の多くはリウマチ熱でした。現在では、そのリウマチ熱は抗生物質の発展で著しく減ってきましたので、それ以外の原因によるものが多くなってきました。
近年、最も多くみられる僧帽弁閉鎖不全症は、僧帽弁そのものが弱くなり、結果として弁による血流コントロールが上手にいかなくなり、血液の逆流が起きてしまうものとなっています。
弁形成術 -弁を取り除かず患者さん自身の弁の悪いところを修復し、機能を回復させる手術
僧帽弁閉鎖不全症に対しては、7割以上の患者さんにおいて自分の弁を切除せずに弁を形成し、直すことができます。日本胸部外科学会の調査では僧帽弁閉鎖不全症における「僧帽弁形成術」は全体の57%程度と報告しています。
もし、あなたの僧帽弁閉鎖不全症に対して「僧帽弁置換術」を行うとの説明がありましたら、その病院での「弁形成術」と「弁置換術」の比率を聞いてみて下さい。
「弁形成術」は「弁置換術」と大きく異なっています
「弁形成術」は弁を取り除かず患者さん自身の弁の悪いところを修復し、機能を回復させる手術です。弁の形を整えるために弁の周囲にリングを逢着する場合が多くあります。
また、「弁置換術」と比較し術後の感染症や血栓症のリスクが低いと言われています。抗凝固剤(ワーファリン)の内服も不整脈がなければ3カ月間のみで十分です。
「弁形成術」は「機械弁」と「生体弁」の長所を合わせた術式と言えます。

弁形成術は一発完治が大切
「弁形成」には、より高度な技術が必要
「弁置換術」は、悪い弁を取り除き、新しい弁に取り換える手術です。このため、弁をしっかり入れることが重要で、血液の逆流を止めることはできますが、一生、抗凝固剤を飲み続けなくてはなりません。患者さん毎に弁の逆流の場所も原因も異なりますからより高度な技術が必要です。
このため、習熟していない外科医が担当すると、血液の逆流が止まらなかったり、心臓を止める時間が長くなったりして、“下手の長談義”の末、結局、「弁置換術」になってしまう場合も多くあるようです。
体や心臓への負担が軽くすむ「弁形成術」
ポートアクセス法(MICS/小切開法)
傷口が小さい手術や穴だけで行う手術があります。体や心臓への負担は軽くすみます。確実な「弁形成術」を行うと手術後は抗凝固薬を飲まずに済みますし、薬による副作用もさることながら、弁機能不全や脳出血なども起こすことはありません。
つまり、僧帽弁閉鎖不全症に対する「形成術」は経験と知識、そして、高度な技術を備えた病院で行う方が好ましく、それにより手術後の患者さんの結果も異なってきます。
傷が小さくて済む「弁形成術」
我々は、「僧帽弁形成術」を僧帽弁閉鎖不全症の70〜75%の患者さんに行って、良好な結果を得ています。日本胸部外科学会での調査で明らかになっていますが、「僧帽弁形成術」を行っている施設における僧帽弁閉鎖不全症の全手術数に対する「僧帽弁形成術」施行数の割合が平均60%程度であることを考えると、高い割合での形成術を行っていると言えるでしょう。
また、最近では胸を真ん中で切らずに小さい切開で行ったり(MICSと言います)、内視鏡を用いて傷を小さくする手術をしています。この手術法を用いると、手術傷が小さいので術後の回復が早く、ほぼ3〜5日で自宅に帰ることができます。
特に、ロボット内視鏡を使うととても正確な弁の形成ができますので、術後の弁の機能がとてもよく保たれています。
僧帽弁手術での弁形成率
僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁手術での弁形成率 |
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|---|---|---|---|---|---|
| Team WATANABE | 石川県 | 富山県 | 福井県 | 全国 ※日本胸部外科学会 アンケートより |
|
| 2009年 | 92.3% | 49% | 18% | 42% | 54% (2358/4320) |
| 2008年 | 92.9% | 57% | 10% | 38% | |
※出典はメーカー各社より算出
形成率そのものの値は原因疾患により決まります。
身体に傷をつけない「ロボット内視鏡手術」の素晴らしさ

人工弁の特徴
「弁置換術」とはもともとの心臓弁を切除し新たに人工弁を取り付ける手術です。
人工弁には「機械弁」と「生体弁」の2種類に大きく分けられ、それぞれに特徴があります。

血行動態(弁としての働き)はどちらも大きな差異はありませんが、耐久性(長持ちするかどうか)、抗血栓性(血の固まりがつきにくいかどうか)に違いがあります。
| 疾患名 | 機械弁 | 生体弁 |
|---|---|---|
素材と構造 |
チタンやバイロライトカーボンなどの金属が素材で半月状の弁葉が開閉する構造 |
ウシの心膜やブタの心臓弁などの生体組織からできている |
耐久性 |
半永久的 |
10〜20年 |
抗血栓性 |
血栓の可能性があるため抗凝固剤の内服が必要 |
血栓の心配はほとんどない |
抗凝固剤内服 |
生涯必要 |
不整脈がなければ術後3カ月間のみ |
短所 |
抗凝固剤(ワーファリン)内服に伴う出血にまつわる合併症、胎児への影響 |
10〜15年後に再手術(再弁置換術)が必要となる可能性がある |


金沢大学附属病院 心肺・総合外科(第一外科)
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